【書評】流浪の月/凪良ゆう【本屋大賞受賞作】の巻
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今日の記事は書評です。今話題のあの作品です!
そうですっ、凪良ゆうさんの「流浪の月」です❤
◆基本情報◆
流浪の月/凪良ゆう・著
発売日/2019.8.29
出版社/東京創元社
◆ストーリー◆
わたしたちの関係は恋人でも家族でも友達でもない。でもわたしはあなたのそばにいたい、一緒にいたいのだ――。
ある女児誘拐事件の加害者と被害者の心情を当人たちの視点に立って、世間からの固定概念による決めつけに対する静かな怒りや、恋でも愛でもないでも互いを大切に思う気持ちを、切なく悲しく時に情熱的に描いた、2020年本屋大賞受賞作。
* * *
家内更紗は自由奔放な両親のもと、すくすく育っていたが幼い頃に父親を病気で亡くし、母親は男を作って娘を捨てた。
そんな更紗はもともとの家庭が型破りで世間の常識とはかけ離れた生活を送っていたため、両親の代わりに伯母の家で育てられることになっても、学校や伯母の家庭で奇異の目で見られていた。
伯母の家では夜、いとこにイタズラをされており、更紗はそんな自分の人生を諦めていた。
そんなある日、クラスメイトと公園で遊んでいた時、細身で高身長の若い男が、自分たちを見ていることに気が付いた。
更紗はその男に「うちにくる?」と声をかけられ、自らの意思でついて行った。
そして世間が誘拐だと騒ぎ立てている時、その男・佐伯文と一緒にいるところを「保護」されたのだった。そして文は小児性愛者であると決めつけられるが――。
◆感想◆
初読み作家さん。
本屋大賞を受賞したということで、気になっていてようやく手に入れた時は胸が躍った。
そしてTwitterで「ゲットしたぜ!」と呟いたところ、「一気読み必至なので、時間があるときに読むといいですよ!」とリプをもらい、早速読んでみたが本当に一気読みしたくなるくらいだった。
文章のリズム・テンポがよく、次々と新しい展開が開けていき、読者を飽きさせない。これは本屋大賞を獲っただけはあるなあとしみじみ。
また、設定もとても独特で斬新だ。
女児誘拐事件の加害者と被害者という、この星で生きている限り出てくる普遍的な事象だが、それでもここに着目するのはなかなか心の眼が鋭いというか、ある意味冷めた目をしているのかなとも思う。
このような小説は私が知らないだけかもしれないが、初めて読んだので、新鮮だったしスリルもあって面白かった。
また着眼点だけでなく、開ける度にどんどん人形が出てくるマトリョーシカのように展開される場面も、興味深い。
小児性愛者だと思っていた文の”秘密”にも「まさか」、亮のDVの背景にある両親の確執も「えっ。そんなことが?」、文の恋人の谷の病気にも「そっかあ…悲しかったね」。
同じような境遇に置かれたわけでも、近くに同じ体験をしたことがある人がいるわけでもないのに、共感できるというこの本においては、主人公と同じように負の感情が沸き起こり、気分の波は下降の一途をたどっていく。
メンヘラと言われればそうとしか言いようがないのかもしれない。
でも、縛ることも縛られることもない、糸のように細くでも強くしなやかな文と更紗の関係は、とても強固なものだし、誰にも引き裂くことができない。
恋人だから一緒にいよう、夫婦だから一緒、家族だから仲良し、という戸籍上でも、紙1枚でもない、もっともっと深く重いところで2人は「結ばれている」。
たとえ体の関係がなくとも、たとえ法律上で夫婦や家族でなくとも。
これは異常だと声高に主張する人もいるだろう。
そんな関係は今のうちだけだと非難するひともいるだろう。
でも、私は更紗の同僚の娘で、一時期2人に預けられていた梨花と同じように2人を応援したい。
梨花は2人の事情を知っても尚、「更紗ちゃんと文くんは、みんなが言うような人じゃない」と世間の非難をものともしない。
幼いからこそ、見えるものがある。
例えば体の変化を受け止められず小児性愛者と自分を落とし込むことで生きる希望を見出そうとした文。
例えばその文に心を救われた更紗。
きっと2人はこれからも強い絆を持って生きていくのだろう。それはとても美しく儚く、そして汚れない清らかなもはや「愛以上の何か」だと思うのだ。
流浪の月はとても切ないです。読んでいるだけで体力と精神力を持っていかれます。
途中まではただただ苦しくて悲しいので、体力がある時に読むのをおすすめします。
でも、ラスト涙なしでは読み終われません。
久しぶりに読書をして涙が溢れました。
読書が好きな方、そして「恋愛でも仕事でも友達関係、家族関係もうまくいってない。なんのために生きているかわからない」という人におすすめです✨
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うさめろ🐰