【書評】光の国の姫/石田衣良【大人向け絵本】の巻
みなさん、こんにちは、うさめろ🐰です。
新型コロナウィルスの影響で、緊急事態宣言が全国に出されましたね。
私はまだ仕事をしていないので、お家で読書をしたり映画を見たり料理をしたりと、気ままに専業主婦を満喫していますが、土日に主人が休みでもお出かけも出来ないので、鬱々しています……💦
でも感染を抑えるためにも自粛するのは当然だし、必要なことですね。
今、世界中が未知なるウィルスによる死の恐怖に怯えている中、「生きること」そして「死ぬこと」について考えさせられるいい本を見つけたので、今日はネタバレなしで書評をしたいと思います📚
◆基本情報◆
光の国の姫/石田衣良・著
発売日/2008.7.10
出版社/小学館クリエイティブ
◆ストーリー◆
ヒメは11歳と7カ月で自殺することにした――。自殺願望のある姫が「死ぬ前に世界を見てみよう」と、がちょうのガウチョと一緒に旅をするお話。
生きていることの奇跡、愛されるということは何かを教えてくれる1冊。
◆感想◆
32ページと10分くらいで読める薄さの大人向け絵本です。
衣良さんの心にすっと手が伸びてそこをあたためてくれるような優しい語り口調と、鯰江光二さんの柔らかいタッチの絵に癒されます。
これはテレビの企画から生まれた本ですが、設定が斬新ですよね!
しかし11歳と7カ月の小さな女の子が自殺を決意するほど、この世は荒んでいて希望もなにもないのか――と、冒頭から気分が下がります。
そして中盤でもっと気持ちがへこむようなシーンが出てくるのです。
ヒメが大切な存在を喪うのです。(あ、これ誰って言ってないからネタバレじゃない……よ……ね?)
でも失うことで得られる気付き。それは失ってからでは遅いけれど、それが命を懸けて伝えようとしてくれた言葉・思い・願いを汲み取り、心の胃で咀嚼し、自分の血肉にしていけばきっとその存在が私たちの中に居続けてくれるのではないのでしょうか?
* * *
実は私は父を早くに亡くしています。
私が高校1年生15歳の時、父は36歳の若さでこの世を去りました。
夜中に発作が起きてそのまま――という呆気ない亡くなり方だったので、最後に何かを伝える時間も、悲しむ時間も何も与えられず、そのまま通夜・葬儀を執り行い、父は灰になりました。
その時私が真っ先に考えたのは「〇〇しておけばよかった」「〇〇な未来が待っていたのに」ではなく、父の匂いのするワイシャツやネクタイやハンカチをどうするか、でした。
我ながら笑ってしまいます。
でも、父がいなくなって尚、私は父の存在を身近に感じていたかったのですね。
結局あれから14年が経ち、父の遺品も整理され、匂いのするものは何もありませんが、それでも父は私のそばにいてくれるといいなと思っています。
* * *
人が死ぬというのは、周りの人に大きな傷跡を残します。
それがましてやヒメがしていたような自殺ならなおさらです。
ヒメが最後に取った決断とは一体何なのか。
祖父母や父母が命名した名前に隠された思いとは。
自殺を思いとどまることができる1冊!と断言はできませんが、(そんな魔法はないので)絵本ですし10分くらいで読めますし、難しいことは書いてありません。
非常にシンプルです。シンプルに「自殺はダメだよ」と伝えています。
「死ぬのは本人の勝手じゃん。生きる時自分の意思で生まれてこれなかったんだから、死ぬ時くらいわがまま言ってもいいでしょ」
とよく言われますが、ごもっともな意見です。
でも、私が悲しいのです。周りの人が悲しいのです。ヒメも悲しがります。
個人差はあれど、1人ぽっちで生きている人はいません。
たとえイジメられていても、たとえホームレスでも、たとえ難病で明日死ぬとしても。
それでも明日を夢見るとか希望を持てなんて言わないから、とりあえず生きてください。
息してご飯を食べて排泄するだけで十分。
それだけでもう十分生きているだけで生きる価値があります。
あなたは生きている。それだけでもう奇跡。
* * *
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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うさめろ🐰